84 パパがイタチを撃ってきてくれたことについて

あのね 夕がた 家に

帰ってきた 僕のパパ

帰ってきた 僕のパパ

野辺を 遅く 家に。

パパはふっと見て 気がついた

地べたに イタチが座ってる。

地べたに イタチが座ってて、

しかもパパに 気づいていない。

 

パパは思った 「イタチか・・・

見事な獣だな。

見事な獣だな、

もしこれが イタチだとしたら」。

 

イタチは 座って 座って、

そしてパパのほうをふっと見た。

そしてパパのほうをふっと見たら、

もう 座ったままではいなかったね。

 

パパは すぐに 駆け出して、

鉄砲に 弾 こめた、

猛スピードで 弾 こめた、

イタチが 逃げてしまわぬように。

 

イタチは 川のほうへ 走ってく、

茂みから つかず離れず、

彼の後ろを つかず離れず、

パパも その川のほうへ 駆けてゆく。

 

パパは 怒鳴る

弾丸 ガチャガチャ鳴らして、

鉄砲 ガチャガチャ鳴らして、

「待てぇ!」と 叫ぶ、

 

イタチは 尻尾を ぴんと立て、

橋の向こうに いちもくさん。

橋の向こうに うなりをあげて疾走する、 

空に 尻尾を ぴんと立て。

 

パパは ときの声をあげ、

丘の上から まっしぐら

躍り上がって まっしぐら

まだまだ イタチを追いかける。

 

鉄砲は パパの手の中

鳴り響く タ ラ ラ!

打ち鳴らすように タ ラ ラ!

飛び跳ねる 手の中。 

 

パパは 駆け寄る、

イタチは もう ぐったり。

イタチは 地べたに ぐったり、

そしてパパから逃げもしない。

 

そこで すばやく 僕のパパは、

イタチを 家に ひきずってきた。

イタチを 家に もってきたんだ、

後足をひっつかんで、僕のパパが。

 

嬉しくて僕は 手を打った、

イタチで僕は 胸いっぱい、

木屑をいっぱいつめて 剥製つくった、

そうして 再び 手を打ちならした。

 

ほら 君らの前に 僕のイタチ

ページの上 斜めに。

描いてあるでしょ 斜めに

君らの前に 僕のイタチ。

 

1929